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福岡高等裁判所 昭和56年(ネ)283号 判決 1982年1月27日

控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という)

山崎信之

被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という)

社団法人日本音楽著作権協会

右代表者理事

石井春水

右訴訟代理人

井上準一郎

主文

控訴および附帯控訴にもとづき原判決を次のとおり変更する。

控訴人は、福岡市中央区西中洲四番四号所在スナック「にほんの舘」において原判決別紙楽曲リスト、同(Ⅱ)及び同(Ⅲ)各記載の音楽著作物を営業のために演奏してはならない。

控訴人は被控訴人に対し金三、四九二、〇〇〇円及び内金二、一九六、〇〇〇円に対する昭和五三年四月一三日から、内金一、二九六、〇〇〇円に対する昭和五六年四月二九日から、いずれも右支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審ともこれを三分し、その一を被控訴人の、その余を控訴人の負担とする。

この判決の第三項は仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一<省略>

二そこで、まず控訴人の著作権侵害の実態について検討する。

<証拠>を総合すると、次の事実が認められる。

1  控訴人は、スナック「にほんの舘」開店当初から昭和五四年ころまでは日高満、同年六月一日から同月四日まで小林隆、同月五日から同年一〇月五日まで北村孝、同月六日から昭和五五年三月ころまで荒蒔雄作、同月ころから現在に至るまで前田祐志を雇傭し、同人らにピアノを演奏させている。

2  右ピアノ演奏者らは、荒蒔がスナック「にほんの舘」に専属して演奏していたほかは、殆んど中洲界隈の他のスナック等にかけもちで演奏しており、その月間演奏曲数にもかなりの差がみられ、北村孝が一日五ステージ、一回二五分、荒蒔が一日五ステージ、一回三〇分、前田祐志が一日四ステージ、一回二〇分から二五分位で一回に演奏する曲数は平均して六、七曲である。しかし、博多山笠の夏祭期間中などは右の演奏時間、回数が延長されて一日五〇曲をこえる演奏がされたこともある。

3  被控訴人は、「にほんの舘」が開店したころから同店で音楽の生演奏が行われていることを聞きこみ、同店とは通りをへだてた向い側にある「セントラル・ベニス」に契約金支払の督促にしばしば通つていたため、その都度「にほんの舘」の状況を窺つたり、右「セントラル・ベニス」や「にほんの舘」の従業員らから演奏者、演奏時間、演奏回数を聞き、昭和四九年一〇月二五日には実地に当つて演奏の実態を調査したところ、同日午後八時から翌日午前〇時三〇分までの間に日高満が五ステージの演奏をし、一ステージの時間は三〇分で右五ステージを通して三九曲の演奏がされたことを現認したほか、その後も数回に亘つて臨時に現地調査をして「にほんの舘」でピアノ演奏が日常的、継続的に行われていることを確認した。

<反証排斥略>

以上の事実によれば、控訴人は、スナック「にほんの舘」を開店した昭和四八年二月二八日以降現在に至るまでピアノ演奏によつて継続的に客に音楽の生演奏を聞かせ、もつて被控訴人の管理著作物を無断で演奏使用していたものというべく、その一日の演奏曲数はごく控え目に見積つても一日四回のステージ演奏で一回六曲の演奏がされ、これを日曜、祭日等の休日を除いた平均月二五日の営業日に行つていたものと推認することができる。

三ついで、控訴人の著作権侵害にも判旨とづく損害額について判断する。

<証拠>によれば、控訴人の「にほんの舘」は定員三七名(五〇〇名未満)、客席総数四三(一〇〇席未満)、平均人場料一、〇〇〇円以上一、五〇〇円未満でその平均営業日数は月二五日であるから、「著作物使用料規程」により一回当りの使用料を計算すると原判決別表(二)の計算表のとおり金六〇円になり、一日二四曲分の使用料は金一、四四〇円、一か月(平均二五日)の使用料は金三六、〇〇〇円となるので、控訴人の右著作権侵害にもとづく損害額は、右一か月当りの使用料金三六、〇〇〇円に、開業以来昭和五三年三月末までの月数六一か月分を乗じた金二、一九六、〇〇〇円およびこれより昭和五六年三月末までの三六か月分を乗じた金一、二九六、〇〇〇円の合計金三、四九二、〇〇〇円である。

四したがつて、控訴人は被控訴人に対し、「にほんの舘」において、著作権法一一二条にもとづき原判決別紙楽曲リスト、同(Ⅱ)及び同(Ⅲ)各記載の音楽著作物を営業のために演奏してはならない義務を負うと共に、不法行為にもとづく損害賠償として、被控訴人に対し金三、四九二、〇〇〇円及び内金二、一九六、〇〇〇円に対する訴状送達の日の翌日である昭和五三年四月一三日から、内金一、二九六、〇〇〇円に対する附帯控訴状送達の日の翌日である昭和五六年四月二九日から、いずれも右支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。

よつて、右と趣旨を一部異にする原判決を控訴および附帯控訴にもとづき右のとおり変更し、被控訴人のその余の請求は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用について民訴法九六条、八九条、九二条を、仮執行の宣言について同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(高石博良 谷水央 足立昭二)

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